日本財団が現在進めている「海と日本プロジェクト」のサブプロジェクトの一つに、「深海研究スーパーキッズ育成プロジェクト」があります。
このプロジェクトは小学校5-6年生に、深海研究のエキスパートと触れ合う機会を提供し、将来の深海研究をリードするエキスパートを養成することを目的としています。
この深海研究スーパーキッズ育成プロジェクトから私達MaOI機構研究所に、プロジェクトに参加する小学生に海洋研究施設を見学する機会を設けたいとのご相談がありました。そこでプロジェクトに参加する小学生11名をMaOI機構研究所の拠点であるMaOI-PARCご招待し、私達が取り組んでいる研究について、ちょっとした実験を体験してもらいながら説明しました。
題して「海洋研究施設“MaOI機構”訪問」。MaOI機構研究所から、私齋藤と島貫研究員、樋口SAの三名が参加しました。MaOI機構にとって、小学生をゲストとしてお迎えするのは今回が初めての試みでした。
第一部 : どのようにして深海生物は進化してきたのか
講義は2部形式。第一部ではまず私、齋藤がMaOI機構研究所で研究を進めている”深海生物”、サクラエビとキンメダイについてお話をしました。
話のメインは「どのようにして深海生物は進化してきたのか」について。
実際にお話をさせていただいて、参加していた小学生の理解の速さと好奇心の強さには驚かされました。「海洋では様々な生物が独自の方法で深海へと適応していった」という難解な進化のストーリーのお話でしたが、小学生のみなさんに興味を持ってもらえたようで、大変嬉しく思いました。
また、小学生たちにはサクラエビのDNA抽出も体験していただきました。試験管のなかでDNAを析出させる実験でしたが、実際にDNAを目にすることができて小学生たちも興奮を隠せないようでした。
特に現代の生物学においてDNA、遺伝子、ゲノムという言葉を耳にしない日はありません。DNAに実際に見て触れてみたことで、参加者たちの生物への関心が少しでも高まってくれれば良いなと思っています。
第二部 : 目には見えない微小な生物、微生物
第二部は島貫研究員による微生物のお話。
微生物は目には見えない微小な生物ですが、深海を含む地球上のあらゆる環境に生息しています。
島貫研究員は実際に微生物が増殖する様子を動画で示しながら、彼らがアクティブな生物であることを説明しました。
また、島貫研究員がこの日のために製作した、タツノオトシゴなどの”微生物魚拓”を小学生たちに見せ、魚の表面に微生物がいることをわかりやすく説明しました。
さらに、小学生の足や手の指などをプレパラート上にプリントし、写し取られた微生物を顕微鏡で観察しました。
小学生たちも自分の皮膚上に様々な微生物が存在することを実感できたようで、より身近な生物として微生物を理解してもらえたのではないかと思います。
第三部 : QAコーナー
最後は、Q&Aコーナー。小学生からの様々な質問に私齋藤がお答えしました。
深海研究スーパーキッズ育成プロジェクトでは小学生が独自のテーマを設定し、課題解決に向けて深海の研究を進めるカリキュラムとなっています。
このコーナーでいただいた質問も小学生の皆さんが研究を進める中で生じた疑問についてにものや、今後の研究方向性についてアドバイスを求めるものがほとんどでした。 小学生の皆さんからは多くの質問をいただきましたし、活発な議論をさせていただきました。
議論の中で子供達が自らの研究について仮説を立ててそれを検証しようと悪戦苦闘していることがよくわかりました。 仮説と検証を繰り返しながら物事を理解していくプロセスは大人であってもなかなかできることではありません。 来ていただいた小学生の深海への研究意欲には、ただただ感心させられるばかりでした。
私が小学生たちに良いアドバイスをできたか、いささか不安ではありますが、彼らが深海で何かを発見する手助けとなれば嬉しいです。
“深海研究スーパーキッズ育成プロジェクト”の目的は「次世代の海洋専門リーダーを育てること」だそうです。実際に小学生たちにお会いしお話をさせていただいて、その知的好奇心の強さ、柔らかい発想力は”本当に素晴らしい”の一言でした。この子供たちが将来、世界をリードする海洋専門家として活躍されることを心から願っています。
文 齋藤禎一 MaOI機構上席主幹研究員