2026年3月16日
業務報告

令和7年度ブルーエコノミー研究会を開催しました

MaOI機構では、マリンオープンイノベーションプロジェクトの政策的評価を行うことを目的に、2022年度より「ブルーエコノミー研究会」と称して、静岡県の海洋関連産業が地域にどの程度の経済波及効果をもたらしているかを定量的に把握する研究会を催しています。

昨年12月に静岡県から、最新の産業連関表が公表されたことをうけて、今年度の研究会を令和8年3月10日(火)に開催いたしましたので、その様子を紹介いたします。

報告内容

報告1 静岡県の海洋関連産業の市場規模の推計

初めに、当機構特任研究員の青木研究員から産業連関分析基づく、静岡県の海洋関連産業の市場規模の推計結果を報告しました。

あくまで試算にはなりますが、静岡県における海洋関連産業の生産額は1兆2千億円で、県全体の生産額に占める割合は3.7%ほど、付加価値額では5千6百億円で、県全体の総付加価値額の3.3%ほどになるとのことです。

ちなみに、海洋関連産業とは、OECDの考え方では以下の7つが該当するそうです。
①海上または海中で行われる活動
②主に海洋上または海洋内で使用する他の商品やサービスを精算する活動
③海洋環境から非生物資源を抽出する活動
④海洋環境から生物資源を採取する活動
⑤海洋環境から採取した生物資源を中間投入物として使用する活動
⑥海洋の近くに位置しなければ、おそらく起こらないであろう活動
⑦海に近い場所に位置することで、特別な利点が得られる活動

①から⑤についてはわかりやすいですが、⑥の例としては海岸清掃活動などが挙げられるとのことです。また、⑦についてはマリンリゾートなど、海の近くの宿泊施設などが該当するとのことです。

一口に海洋関連産業といっても多岐にわたりますし、明確な定義があるわけではないので、「推計結果」ではありますが、継続的に推計することにより、規模の推移を追跡調査することが重要とのことでした。

報告2 ブルーエコノミーの貨幣評価の効果とその限界について

続いて、一般社団法人海洋産業研究・振興協会副主任研究員の田中 元様から、報告を行っていただきました。

「ブルーエコノミー」とは海洋に関連する産業と環境の保全を両立する概念です。したがって、その中には漁業や観光などによって得られる「利用価値」と、生態系が存在することによって未来の人類もその恵みを享受できることの価値である「非利用価値」が含まれます。

漁業や観光はもちろん、例えば自然環境による大気の調整機能(ヒートアイランドの抑止など)など、人類が生態系から受けている恩恵(サービス)には様々な種類があり、それらをまとめて「生態系サービス」と定義されています。報告1にあった産業連関表やその他の手法を駆使することによって、生態系サービスを貨幣評価することができます。

貨幣評価することは、「EBPM(Evidence-based Policymaking:証拠に基づく政策立案)」のうちのEvidenceを作ることになります。したがって、ブルーエコノミーを貨幣評価することによって、海洋政策の合理的な意思決定を支えることができます。

しかし、皆様も想像にたやすいと思いますが、生態系の価値などを含むブルーエコノミーの貨幣価値を正しく評価することは極めて難しいです。
その理由として、生態系サービスは必ずしも有益なものとは限らないこと(例:野生生物によって農作物や家畜が荒らされる)、環境保護よりも改変した方が経済的にはメリットがある場合(例:外来魚を養殖したら高値で売れた)、技術革新によって生態系サービスの利用が不要になる場合などが挙げられました。

このような問題の背景には、ブルーエコノミーを貨幣評価する際に、経済効果などの「動くお金(フロー)」にばかり注目して、「自然そのものの価値(ストック)」を評価できていないことや、生態系が持つ「不確実な価値」を単純化しすぎてしまう危険性があります。

自然そのものの価値を評価し、複数の指標を組み合わせた総合的な評価が必要とのことです。

来年度以降の活動について

ブルーエコノミー研究会は来年度以降も継続して活動予定です。御興味を持たれた方はぜひ、研究会に御参加ください。

※当研究会はアーカイブ動画の配信はございません。