2022.10.18

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第13回MaOIセミナーに寄せられた質問への回答

 先日の第13回MaOIセミナーでは、多くの方々にご参加いただきまして誠にありがとうございました。会場からも多くの質問がございましたが、チャットにも質問をいただきました。植木様よりチャットに寄せられた質問にご回答いただきましたのでご紹介いたします。

質問1 各健康機能性の関与成分と作用メカニズムの説明をお願い致します。

回答  作用機序としては魚肉やかまぼこの加水分解物の抗酸化活性が高いことが知られているので何らかの影響を及ぼしていると考えられますが、その詳細についてはこれからの研究課題です。抗酸化活性の高い機能性成分としてRI、IRというジペプチドが同定されており、抗疲労効果が期待されています。

質問2 かまぼこは、日本独自の食品だと聞きましたが、本当でしょうか? また、初期のかまぼこは淡水魚を原料としていたとも聞きました。事業として成立するかはわかりませんが、淡水の外来魚などを利用して、それなりのかまぼこはできるのでしょうか?

回答 かまぼこや竹輪をはじめとする水産練り製品は日本で生まれた伝統食品です。現在では世界でも広く食べられており、特にカニカマは欧米での需要が多く、『surimi』と呼ばれて親しまれています。

 初期のかまぼこはナマズを原料としていたと書かれた文献もあり、淡水魚の使用も可能です。原料適性は弾力、風味、価格、処理のしやすさなどのバランスで決まるため、一概には言えませんが、例えばブラックバスでは十分な弾力を出すことも出来ます。世界に3万種以上生息する魚種の中で求める食感を出すことが出来る魚種はそれほど多く発見されていない一方で、まだ試していない魚種も山のように残っています。美味しくて低価格のすり身を作れる魚種の探索は業界としても興味のある課題です。

質問3 たんぱく質がそのまま吸収されないとして、何が実際の機能性を示すのでしょうか? 

回答 ジおよびトリペプチドまでは小腸から吸収されることが分かっていますので、タンパク質が分解されて生じた低分子のペプチドが機能性を示すことが一つ考えられます。また、直接的な作用ではなく、例えばタンパク質加水分解物が腸内での代謝に影響を及ぼすような間接的な作用も可能性としては考えられます。しかし、まだ現象が先行し、原理の解明に至っていない部分も多く今後の大きな課題です。

 これまでにRI、IRという2種類の抗酸化活性の高いジペプチドが同定されており、これらのペプチドを含む抗酸化活性の高さが健康機能性に対して何らかの影響を及ぼしていると推測しています。

質問4 阻害ペプチドは分かりますがその他の機能は如何でしょうか? 

回答 すり身を酵素分解した加水分解物である魚肉ペプチドは大豆ペプチドなどと比べて抗酸化活性が高いことが分かっており、RI、IRという特に抗酸化活性の高い2種類のジペプチドは配列まで同定されています。

質問5 胃のPHが年齢とともに上がることでペプシンの働きが悪くなり、消化能力が落ちるとの説明がありました。 年を取るほど胃酸過多や胃酸逆流が強まるような気がしますが、ペプシンの分泌量は年齢とともに変化するのでしょうか?(かまぼこと関係ないことですいません)

回答 以前は胃酸の分泌量は加齢とともに減少すると言われていましたが、現在では加齢そのものの影響ではなくピロリ菌感染などによる萎縮性胃炎になる人の数が若年層より相対的に多いため、結果として胃酸分泌量が減っていると考えられています。実際にピロリ菌陰性の人のみでの比較では加齢による胃酸分泌量の変化は認められないそうです。

 胃酸逆流については筋力低下によるものが多く、加齢による筋力低下が関係していると考えられます。

質問6 吸収が高い事は試験管テストやプロテアーゼの量やPHなどでは予測できますが、実際のヒト試験で血中アミノ酸濃度が他の蛋白質より、「早い」「高い」という実証データはありますか?

回答 まだ実証できておりません。今後必要なエビデンスです。現状では現象先行型で原理解明が追い付いていない部分もありますので、研究テーマに興味を持って一緒に解決してくれる研究者の仲間探しも課題と考えています。

質問7 賞味期限はどのように設定してますか。

回答 官能検査による品質確認と一般生菌数の自社基準を指標として保管テストを行い、安全係数をかけて賞味期限を設定しています。

質問8 かまぼこの消化性はなぜ高いのでしょうか?たんぱく質の構造によるのでしょうか?

回答 タンパク質の構造変化および構造安定性の差によるものと推測しています。刺身と比較した場合、かまぼこを作る工程中に起こるタンパク質の変性により立体構造が変化し、酵素による消化を受けやすい形状となるため消化性が高まると考えています。畜肉などとの比較では、もともと魚類のタンパク質は哺乳類のタンパク質よりも構造安定性が低いことが知られていることからも、酵素による切断部位が表面へ露出しやすく、消化性の差が生まれるのではないかと推察しています。

(質問、回答共に原文のまま 但し質問者の氏名については事務局で削除しました)

 ご質問いただきました皆様、また、お忙しい所にご回答いただきました植木様に深く感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

 第14回MaOIセミナーは、マリンオープンイノベーションプロジェクト成果発表会として11月30日に開催します。開催内容については随時ホームページでお知らせします!