2024.09.19

イベント

第21回MaOIセミナーを開催しました!

 2024年9月11日(水)にシンガポール食品バイオ技術革新研究所主任研究員で静岡県藤枝市出身の杉井重紀先生を講師にお招きして第21回MaOIセミナーを開催しました。

 現在、シンガポールは、テクノロジーを使い、2030年までに自国の食料自給率を30%にまで引き上げるというSingapore30 by 30というロードマップを掲げ、代替肉、代替タンパク質開発などフードテック関連の研究が進められています。

 シンガポール科学技術研究庁A*STARの研究機関で研究されている杉井先生は、脂肪細胞の培養技術に注目したスタートアップImpacFatを立ち上げられました。なかでも魚由来の脂肪細胞は、飽和脂肪酸は少なく、トランス脂肪酸フリーで、マグロのトロに代表されるように、おいしさや食感に寄与する重要な成分です。また、EPA,DHAなどオメガ3脂肪酸を細胞内に蓄積させることも可能です。杉井先生らのグループは、この長所が多い魚由来の脂肪系細胞株をはじめて樹立し、細胞の培養方法を確立されました。培養条件が揃えば、継続的に培養可能だということで持続可能な食料生産としての一面も期待できます。

 ここまで、EPAやDHAといった脂肪酸の名前が出てきましたが、脂肪細胞を培養することと純粋な脂肪酸を合成することの何が異なるの?と疑問に思われる方もいるかもしれません。両者の大きな違いは、脂肪の品質保持力にあるそうです。脂肪細胞は細胞が持つ二重の膜に覆われているため、脂肪が酸化しにくい構造になっています。さらに、細胞活動として酸化を防ぐ機構も備えているため、純粋な脂肪酸と比較し、物理的にも生物学的にも長期にわたり品質を保持できるというメリットがあると考えられています。さらに、当然ながら、より生の食品に近い構造であるため、食感もよりリアルに再現できるとのことです。

 今後は、この細胞培養用の培地を改良しコストを下げていくことが、マーケット進出への大きな鍵となりそうです。杉井先生とMaOI機構研究所は共同研究を実施しており、駿河湾で獲れた魚の脂肪を使った代替肉がスーパーに並び、味も食感も満足できる日は、もうすぐかもしれません。今後も杉井先生の研究にご注目ください。

 最後に、会場でご参加いただいた皆様、オンラインでご参加いただいた皆様に御礼申し上げます。次回は、令和6年度マリンオープンイノベーションプロジェクト成果発表会・第22回MaOIセミナーとして2024年11月22日(金)にグランシップ静岡で開催いたします。詳細はHPでお知らせいたしますが、ぜひ、ご予定ください。

 ※杉井先生の講演動画は、MaOIフォーラム会員限定で公開します。