2022.08.22

レポート

第5回MaOIサロンを開催しました!

一般財団法人マリンオープンイノベーション機構(MaOI機構、理事長:松永是)は7月20日(水)に通算5回目(令和4年度1回目)のMaOIサロンを開催しました。講師に東京海洋大学海洋科学技術研究科教授 吉崎悟朗先生をお招きし、『生殖幹細胞を使って死んだ魚の子孫を増やす~魚類の貴重な遺伝子資源を失わないために~』というタイトルでご講演いただきました。

冒頭、研究の背景として、養殖分野での現状、課題についてお話がありました。ウシ、ブタ、イネのように畜産業や農業の分野では、家畜化・栽培化が進んでいますが、養殖で利用されている養殖魚はほぼ野生種であり、養殖分野においても選抜育種を進めることが喫緊の課題となっています。しかしながら、選抜育種には膨大な作業、時間、コスト及びスペースが必要となります。さらに、養殖に適した品種を開発できた場合でも、設備トラブルなどにより、その品種を失うことがあります。苦労して生み出した品種を喪失してしまった場合、現状ではあきらめざるを得ず、大きな損失となっていました。

今回ご講演いただいた吉崎先生の研究は、希少種が失われた時に、どうにかその種を残す方法がないかを探られた成果です。まず、魚が死亡したと判定する条件として、心停止、呼吸停止、血流の停止をあげられ、個体として死亡した後も細胞自体は増殖可能であることを示されました。

続いて吉崎先生は、死後12時間後の魚の生殖細胞(精原生殖、卵原細胞)を取り出して、別の生個体(宿主)に移植すると、生殖細胞群にわずかに含まれる生殖幹細胞が生殖腺に移動し卵、精子へと分化、これらを受精させることで仔魚の子孫を作り出すことに成功されたお話をされました。これにより、例えば、設備トラブルなどの事故が夜間に発生し貴重な魚種が死亡した場合も、翌朝に死体から生殖細胞をとりだし、他の個体に移殖することで、その魚の子孫を残せる可能性を示されました。また、冷凍保存された生殖細胞を用いた移殖によっても正常な卵や精子を作り出すことができることも確認されており、死魚をすぐに冷凍保存することで、その魚の生殖細胞を利用することが可能になるそうです。この技術を応用し、絶滅危惧種の個体を冷凍保存することで、絶滅危惧種を救うことにもつなげていきたいとお話されていました。

ご講演の終了後は、養殖場などで冷凍保存する場合の実際の方法や絶滅危惧種などの生殖細胞バンクの重要性など、参加者の方々と活発な意見交換をしていただきました。

MaOIサロンでは、フォーラム会員限定ではありますが、今後も海洋産業や研究のトップラナーをお招きし、少人数で内容の濃いサロンを開催してまいります。ぜひMaOIフォーラムにご入会いただき、MaOIサロンにご参加ください。

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