2023.12.27
レポート
令和5年度マリンオープンイノベーションプロジェクト成果発表会
令和5年度マリンオープンイノベーションプロジェクト成果発表会を2023年11月21日(火)に開催しました。
深海の恵み:微生物が切り開く未来のバイオ産業
本年度は基調講演に国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC) 生命理工学センター長の出口茂氏をお迎えし、「深海の恵み:微生物が切り開く未来のバイオ産業」をテーマにご講演いただきました。水深200mからを深海と呼ぶなど、地上とは全く異なる世界について様々な切り口でご紹介いただきました。
また、JAMSTECが進めている「深海バイオリソース提供事業」のお話も講演終盤でご案内いただきました。今後、JAMSTECのバイオリソースを利用した静岡県発の新しい商品や製品が産まれることを期待したいと思います。
MaOIプロジェクト成果発表会
基調講演の後は、マリンオープンイノベーションプロジェクトの成果発表会となりました。専務理事の渡邉からマリンオープンイノベーションプロジェクトの概要、5月のブルーエコノミー駿河湾国際ラウンドテーブル、また来年度開催のエキスポ(仮称)についてなど説明しました。
事業成果報告
当機構のコーディネートプロデューサーの加戸より、イベント・セミナー等の参加状況、助成金制度、今年度のトピックについて広く紹介したうえで、令和4年度に終了した助成事業の成果の概要を報告しました。
海洋技術開発助成事業では、海底探査機「COEDO」と環境測定デバイスを使った実証実験の結果(いであ様)概要を説明しました。
MaOI-FS助成事業では、沼津での海ぶどう陸上養殖(Rカンパニー様)、マグロエラから抽出した成分の免疫機能評価(Dr.シーバ様)、養殖現場におけるIoTを活用した安価な水質管理システム(クリップソフト様)、アマモ由来の糖質分解酵素探索とその評価(396バイオ様)の計4件の成果概要を報告しました。
一方、シーズ創出研究委託事業では東海大学海洋学部の動画とAI認識によるサクラエビ漁支援システムについて、高知大学農林海洋科学部からは、駿河湾から採取した微生物の生理活性評価研究の2件につきその成果概要を報告しました。
また、清水港で実施した水中ドローンを活用した港湾点検の実証試験結果も合わせて紹介しました。
いずれの成果も今後の県内産業振興や資源調査に役立つものと思いました。
なお、今回の助成事業の概要は別途MaOIホームページにて公開させていただく予定です。乞うご期待!
事業成果報告の結びとして、MaOI機構では、事業者様のご要望を伺い、こうした助成制度の活用を提案することをはじめ、県内の産業支援プロジェクト、公設試験場、大学研究機関などとのつながりを支援していること、また当機構が行政当局との仲立ちをすることで、実証フィールドとしての場の提供や提案、産業振興に向けた活動を支援させていることを説明しました。
研究成果発表
続いての研究成果発表では、上席主幹研究員の齋藤より、MaOI機構研究所の2023年度活動について報告しました。
報告の中で、齋藤は、MaOI機構研究所では2023年度も引き続きゲノム科学を中心とした静岡県主要水産資源の研究を続行するとともに、コラボレーションによる浜名湖アサリの音響探査技術開発などもスタートしたこと、また2021年度より公開している海洋微生物ライブラリーに関しても、菌株のデータ拡充などを進めより多くの食品企業様に使っていただけるよう改良を進めていることなどを紹介しました。
また、2023年度の特筆すべきトピックとして、ゲノム情報の応用研究として神奈川大学、金沢大学と実施しているサクラエビのCHHホルモン遺伝子群の解析結果や、それによって明らかとなった進化の過程でクルマエビ科とサクラエビ科所属種の間に生じたゲノムの大きな変化についても発表しました。
またもう一つのトピックとして、海藻(褐藻)であるサガラメの遺伝子情報解析および代謝物解析を実施し、サガラメにおける植物ホルモン様生理活性物質を介した生育調節メカニズムの存在が明らかとなりつつあることも紹介しました。
最後にこれら成果は、未だ実現していないサクラエビ養殖技術や、ブルーカーボンとして注目されながらも世界中の海洋から激減している海藻類の人工的な回復(藻場回復)技術などの開発につながるものであり、今後も社会実装を見越した学術研究を続けていくことをMaOI機構研究所のスタンスとして会場の皆様に説明しました。
さらに、会場には、ポスターも掲示し事業成果の報告をしました。会場参加者から事業者に直接に質問できる貴重な場となったようです。ポスター掲示は、活発な意見交換の場を目的にしたく会場のみとさせていただいきました。オンライン参加者の皆様には、ご不便をおかけしたことをお詫びいたします。
皆様のマリンオープンイノベーションプロジェクトへのご協力、ご声援を引き続き、よろしくお願い致します。