2022/10/26

2022年8月5日 〜 8月7日 日本進化学会で駿河湾主要水産資源(サクラエビ・タカアシガニ・シラス・キンメダイ)ゲノム解読研究の成果発表を行いました。


多様なキンメダイ目 : 進化・多様性

キンメダイゲノムについても、多くの研究者と議論をさせていただきました。現在、サメ、エイなど軟骨魚類を除く殆どの魚種は硬骨魚類に分類されます。キンメダイが属するキンメダイ目は硬骨魚綱の中でも多様性に富んだ大きなグループです。キンメダイ目は深海のみならず珊瑚礁などさまざまな海洋環境に生息する種を含んでいます。これまでキンメダイ目のゲノム解読はほとんどなされてきませんでした。私たちのキンメダイゲノム解読は、深海魚としてのキンメダイの進化はもちろん、キンメダイ目の多様な魚種の進化を解明するための基礎的な知見になるのではないかとのことでした。


写真提供 : 静岡県水産・海洋技術研究所

回遊魚であるイワシ(シラス): 集団遺伝解析

カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシのゲノムに関しては、世界中で食されているこれら3種のゲノムが未決定であったことがまず多くの研究者にとって大きな驚きであったようです。イワシ類は回遊魚であり、広い海域を常に移動しています。私達の発表をご覧になった研究者の方々からは、回遊魚の研究に集団遺伝学的なアプローチを加えると面白いのでは、とのアドバイスを頂戴しました。静岡県においても、イワシ類の稚魚であるシラスは黒潮に乗って回遊してきていると考えられており、出生の時期や場所の異なる集団が入れ替わり駿河湾にやってきているものと思われます。私たちも同様のアイディアをもっており、集団遺伝学的な解析に向けた準備を進めていますが、私たちの研究の方向性が支持されるような意見をいただき、自信になりました。

MaOI機構でのゲノム研究

私たちがサクラエビなど静岡県の主要水産生物のゲノム解読をすすめる目的は、得られたゲノム情報を資源量推定や遺伝的多様性の把握などに応用することで、科学解析に裏打ちされた新しい漁業を静岡で発展するためです。

しかし日本進化学会に参加させていただくことで、私たちが研究対象とした水産生物をシンプルに”生物”として議論させていただくことができました。そして、多くの研究者の意見を拝聴しながら、私たちが得たゲノム情報がエビ・カニ類や魚類の進化を考える上で非常に興味深い、学術的に価値のあるものであることも再認識しました。今後も、水産業に資するだけではなく、学術的にも評価されることを目ざして、ゲノム研究を続けてゆきたいと考えています。

文 齋藤禎一 MaOI機構上席主幹研究員


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