広島大学大学院統合生命科学研究科の豊田賢治助教、一般財団法人マリンオープンイノベーション機構の齋藤禎一上席主幹研究員、帝京大学宇都宮キャンパスリベラルアーツセンターの片山秀和教授、神奈川大学の大平剛教授らによる共同研究グループは、サクラエビ（Lucensosergia lucens）の血糖値調節因子を初めて単離・同定し、「LlucCHH1」と命名しました。

写真提供 : 静岡県水産・海洋技術研究所

エビ・カニ類の成長・繁殖を制御する眼柄ホルモンの合成・分泌部位であるサイナス腺を摘出し、逆相液体クロマトグラフィーとRNA-sequencing技術を併用して成分解析を実施。その結果、甲殻類共通の血糖上昇ホルモン（crustacean hyperglycemic hormone: CHH）の一種であることを突き止め、「サクラエビCHH1（LlucCHH1）」と命名しました。

飼育が容易なクルマエビを代替モデルとし、断食後にLlucCHH1または生理食塩水を注射して血糖値を測定。注射から2時間後、LlucCHH1投与群で有意な血糖上昇を確認し、生理食塩水群には変化が見られませんでした。この結果は、LlucCHH1が既報のCHHと同様に血糖上昇効果を持つこと、ならびにクルマエビを用いた機能解析系が有効であることを示しています。

今後の展開

本研究でサイナス腺由来のCHHファミリー遺伝子7種類を同定し、その中には卵巣成熟制御に関与する分子も含まれます。今後は他のCHHペプチド解析を進め、サクラエビの繁殖メカニズム全容解明と効率的な採卵技術の確立を目指します。また、サクラエビがバナメイエビやクルマエビとは異なるCHH構成を持つ事実は、十脚目甲殻類の進化多様性研究にも重要な示唆を与えます。

本成果は2025年4月16日付で国際学術誌『Fisheries Science』オンライン版に掲載されました。
今後の技術開発を通じ、サクラエビ資源の持続的利用と安定供給への貢献が期待されます。

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