2022.10.27

レポート

なぜ今フィッシュプロテインが注目されているのか(第13回MaOIセミナー(令和4年度第2回MaOIセミナー))

2022年10月5日(水)、静岡市のグランディエールブケ・トーカイにて開催した「第13回MaOIセミナー(令和4年度第2回MaOIセミナー)」の概要を紹介します。 聴講者の方は当日の講演内容の振り返りに、また聴講できなかった方は、今後のセミナー聴講の御参考に、お読みいただければ幸いです。

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開催概要

第13回MaOIセミナーは、「フィッシュプロテインのパワー ~ヘルシーフード 練り物の魅力を学ぼう~」をテーマに、現地とオンライン配信のハイブリッド形式で開催。セミナーには水産業、水産加工業をはじめ、食品企業、研究機関、金融機関、医療機関、介護機関等、幅広い業界から122人の方々にご参加いただきました。

セミナーの演題は、「なぜ今フィッシュプロテインが注目されているのか」。鈴廣かまぼこの植木先生にご登壇いただきました。

鈴廣かまぼこは神奈川県小田原市にある創業150年以上を誇る老舗。近年は、かまぼこなどの一般的な練り製品だけではなく、「サカナのちから」、「フィッシュプロティンバー」などの機能性食品の商品開発を行っています。

2020年にはサッカー日本代表の長友佑都選手と「魚肉たんぱく同盟」を結成、魚肉タンパク質の強みを生かした商品開発で、Jリーグのチームや大学駅伝チーム、トレイルランナーやパラアスリートをサポートしていることでも知られるようになりました。

講演者の植木先生は研究開発部部長兼魚肉たんぱく研究所所長として、魚肉タンパク質の研究開発から普及啓発まで幅広く活躍されています。

フィッシュプロティンバー 第13回MaOIセミナー「フィッシュプロテインのパワー ~ヘルシーフード 練り物の魅力を学ぼう~」

講演概要

魚のすりみの魅力

講演では練り製品に使われる”魚のすりみ”の魅力から話題がスタートしました。

魚のすりみは魚肉タンパク質のかたまりで、栄養性が高く、骨がないため食べやすく、健康機能性が豊富という説明がありました。このようにすぐれた食品である魚のすりみですが、近年の日本人の魚食離れを受け、魚の新しい食べ方、利用法の確立を目指した研究が進められているとのこと。魚種・サイズといった練り製品のインプットから味付けなどのアウトプットまでが自由自在という利点もあり、今後の進化が期待できる食品といえます。

現在、研究所では、例えばサイズや魚肉の性質の違い、塩の入れ方、加熱温度などの製造工程の諸条件について計測機器を駆使して検証、これまで伝統によって培われてきた職人技で支えられてきた、かまぼこの製造工程を科学的に見える化することに取り組んでいるそうです。目指すは科学とのコラボレーションによる職人技の見える化。弾力があり、且つしなやかな鈴廣のかまぼこが後世に残るための大事な取り組みです。

タンパク質危機

さて、話は、タンパク質をとりまく環境の話題へ。 皆さんは「タンパク質危機」という言葉を聞いたことがありますか。世界のタンパク質需要が2005年から比較して2050年には210%に増加すると言われていて、供給が間に合わなくなる恐れがあるという話です。

魚肉タンパク質と健康

こうした状況に対し、魚肉タンパク質を食べるメリットを植木先生は紹介します。

データによると魚肉を多く食べている国の国民は長寿である傾向があるそうです。また、妊婦へも好影響があり、子供の発育レベルが高くなることも示されているそうです。そうした国では、魚をたくさん食べるためのインフラが十分に整備されていることも魚肉が健康に好影響を与えている要因として挙げられます。魚が健康によいという実感を皆さんはお持ちかと思います。特に魚の持つEPA、DHAという不飽和脂肪酸が健康に良いことは近頃よく知られるようになってきました。しかし、「魚肉タンパク質」にも健康効果があると先生は述べます。

例えば、血栓が溶ける、ふくらはぎの筋肉量が増える、HDLコレステロールの値が改善するなどの効果が実験で明らかになってきています。

ラットを使った実験では、エサの中に20%含まれるタンパク質をかまぼこのタンパク質に置換したところ、腫瘍の進行が遅くなったという実験結果も報告されているとのこと。ほかにも、血圧上昇抑制作用、認知症予防効果などがあるとも言われています。また、老人福祉施設に協力してもらって高齢者に魚肉ペプチドを摂取してもらったところ、総タンパク質量が増える結果も得られたとのことでした。

むすび

魚肉ペプチドと呼ばれる魚肉タンパク質の成分の一つが、今新たに注目されています。魚肉タンパク質は、必須アミノ酸をバランスよく含む良質のタンパク質であり、またタンパク質の栄養バランスを示すアミノ酸スコアも100点満点中100点です。鈴廣かまぼこでは魚肉タンパク質をさらに吸収の良い状態にかえた魚肉ペプチドを使った商品を開発しておりますが、この魚肉ペプチドですと、摂取後30-40分ほどで速やかに吸収されるほか、摂取したタンパク質が体を構成するタンパク質に利用される効率を示す「正味タンパク質利用率」も97%と高い値を示します。

さらに、魚肉ペプチドは摂取すると、筋肉収縮のエネルギー源であるグリコーゲンが筋肉中に蓄えられます。これはパフォーマンスを高めたいアスリートにうってつけの機能です。

このように、多くのメリットをもつ魚肉タンパク質ですが、より多くの人に食べてもらうためには価格に見合った付加価値を広く知ってもらうことが必要とのこと。ひとりでも多くの人が魚肉タンパク質の恩恵を受けられますように、植木先生の挑戦は続きます。

講演概要は以上です。

次回のMaOIセミナーは、11月30日にMaOIプロジェクトの成果発表会として開催することを予定しております。

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