2023.01.24
レポート
第7回MaOIサロンを開催しました!
今回のサロンでは講師に静岡県水産・海洋技術研究所の川合研究統括官と静岡理工科大学の鎌田先生をお招きし、海のゆりかご、新規天然化合物のソース、さらにはブルーカーボンとして注目されている「海藻」について最新の研究についてお話をいただきました。
静岡県沿岸域における藻場の現状と県水産・海洋技術研究所の取り組み
一人目のご講演は川合研究統括官。海藻が繁茂している環境を「藻場」といいますが、静岡県沿岸を含む日本の沿岸では藻場が枯れてしまう「磯焼け」が大問題となっています。今回は、静岡県沿岸域における磯焼けの現状と、藻場の回復に向けた静岡県水産・海洋技術研究所の取り組みのご紹介です。
伊豆海域のカジメ、テングサ類、ホンダワラ類、や榛南海域のカジメ、サガラメについて、それぞれの磯焼けの原因とそれへの対策をお話いただきました。
また、講演の結びには、水産・海洋技術研究所では、静岡県の新成長戦略研究として、「ブルーカーボンオフセット・クレジット(*1)の申請を可能にする藻場現存量の簡易評価手法の開発研究」に取り組んでいることもご説明いただきました。漁業者等のクレジット制度の活用に向けて、申請に必要な藻場面積及び単位面積当たりの湿重量を漁業者活動組織が簡易的に、かつ一定の精度で評価できる手法の開発に着手しているとのことです。
駿河湾の海洋生物を活用した水産養殖資材に対するSDGs対応型の防除剤開発
二人目の演者は静岡理工科大学の鎌田先生。鎌田先生は“紅藻”が体内に蓄積するハロゲン含有低分子有機化合物について研究されています。これらの化合物は、これまでに抗菌活性などの生物活性を有することが明らかとなっています。今回のご講演ではこの紅藻由来化合物を水産養殖資材に損害を与えるムラサキイガイなどの「汚損生物の防除」に利用する試みについてお話いただきました。
先生は、天然物化学という分野でご活躍されております。同学問は天然物の単離と構造決定(探索・モノとり)、天然物の合成(モノづくり)、天然物の機能性・活性評価(モノの評価)、そして天然物の有効利用に向けた開発研究というフェーズに分かれているそうです。探索のターゲットとなる海藻は、未・低利用の生物資源、具体的には、「雑海藻(ざつかいそう)」となります。低コストで比較的容易に回収可能な“雑海藻”から有用性を見出し、付加価値の付与、新たな商品の開発、廃棄物による環境への負荷軽減等を目指しています。こうした研究により、SDGsへ寄与がなされることに期待したいです。
2人の講師によるご講演の終了後は、参加者の方々と活発な意見交換をしていただきました。
MaOIサロンでは、フォーラム会員限定ではありますが、今後も海洋産業や研究のトップランナーをお招きし、少人数で内容の濃いサロンを開催してまいります。ぜひMaOIフォーラムにご入会いただき、MaOIサロンにご参加ください。