2023.01.31

レポート

令和4年度マリンオープンイノベーションプロジェクト成果発表会

静岡県が推進する「海洋産業の振興と海洋環境保全の世界的拠点の形成」を目指すマリンオープンイノベーションプロジェクトの推進機関として設立されたマリンオープンイノベーション機構。その中核施設であるMaOI-PARCが開所してから2年目を迎えた本年2022年11月30日に、マリンオープンイノベーションプロジェクト成果発表会を開催しました。

特別講演:Blue economyの市場構成と市場規模

今回は特別講演としてデロイトトーマツコンサルティング合同会社執行役員の高柳良和氏より『「Blue Economy」の市場構成と市場規模』というタイトルで、Blue Economy提唱の起源、また日本に浸透してきた経緯などをわかりやすく説明いただきました。

小資源国の日本では、海洋国土、海洋資源を活用・解放していくこと、また国内だけではなく、海のビジネスモデル、ルールを世界につなげていく必要性など、海洋資源の持続的な活用と経済発展を同時に実現する「新たな経済圏」という視点はとても興味深いものでした。

また、MaOI機構の海洋生物資源データについても、資源管理のプロトコルになりえるなど、今後のBISHOPデータベース運営について参考になる点が多くありました。

講演の最後では、MaOI機構への期待の言葉もいただきました。MaOI機構がBlue Economyの推進役となり、静岡から日本をリードしていこうと気を引き締めた次第です。

マリンオープンイノベーションプロジェクト成果発表会 デロイトトーマツ 高柳氏

MaOIプロジェクトの事業化、研究成果

高柳氏の特別講演に続き、マリンオープンイノベーションプロジェクトの取組み内容や事業化・研究成果について、パネルディスカッション形式で発表を行いました。今回のパネルディスカッションでは、助成事業、MaOI機構の海洋微生物ライブラリー、共同ラボに関連ある5名にご登壇いただきました。

マリンオープンイノベーションプロジェクト成果発表会 パネルディスカッション

一人目は、日建リース工業株式会社事業本部事業開発部部次長の渡邊将介氏。渡邊氏からは、「三保サーモン」の陸上養殖事業についてお話いただきました。

この事業はマリンオープンイノベーション事業化促進事業補助金制度を利用した日建リース工業株式会社様の新規事業です。ベンチャー企業のセンサデバイスシステム技術を使用し効率的な給餌や飼育管理を整え「三保サーモン」を養殖しています。このシステムを新たな事業「活魚輸送」等にも繋げていくべく、実装にむけて取り組んでいる事をお話しいただきました。また、渡邊氏の発言で「競い争うのではなく、共創の場を得る事ができた」という言葉が印象的でした。

二人目にお話しいただいたのは株式会社秋山機械代表取締役社長の小口郁哉氏。冷凍マグロ・カツオ切断機械「バンドソー」の製品動画をご紹介いただきました。

100キロを超える冷凍マグロ・カツオ切断は、手指切断の危険を伴う大変な作業です。この危険を伴う作業には人材が多く集まらないという悩みを抱えた加工業者が多く、その解決策として緊急停止装置を導入した機械の要望が寄せられていました。MaOIコーディネーターが感知センサー技術を持つ企業を紹介し、この「緊急停止装置付きバンドソー」が誕生しました。小口氏からは、実際の現場で必要となる製品を生み出していく努力をお話しいただきました。

三人目は、食品品質サポート代表の五十島学氏。五十島氏からは、MaOI機構の海洋微生物ライブラリーの乳酸菌を使用し誕生した「大豆ヨーグルト」の開発についてお話いただきました。

このヨーグルトは地場野菜などから発酵した乳酸菌を使うなどと試行錯誤していた時に海洋微生物ライブラリーの浜名湖の海藻から発見された乳酸菌を使い誕生。生産製造する工場が見つからず、自分たちで工場を建て生産するという浜名湖ノリカラ乳酸菌をブランド化していくという強い思いが感じられる発表でした。

四人目の登壇者は、MaOI‐PARCの共同ラボ利用者である株式会社396バイオ代表取締役の原陽子氏。原氏が取締役を務める396バイオはMaOI-PARCで研究を行っており、MaOI機構の研究所メンバーと共に研究・実験機器を共同で利用されています。

共同ラボでは、Vmax細胞の開発、生産を行っており、その研究内容について説明いただきました。また、MaOI機構と共同研究を進めており、今後の成果に期待したいと思います。

五人目は、慶應義塾大学理工学部の高橋氏。高橋氏は、本年度のシーズ創出事業に採択されました。高橋氏からは、事業の概要を御紹介いただくとともに、ご自身の研究分野の圧力センサデバイス(MEMS)開発などについて説明いただきました。

小型センサーは野生動物に装着可能であるなど新たなデータ取得方法の可能性を感じられました。高橋氏からは、この圧力センサデバイス技術を使い社会還元、社会貢献をしていきたいという強い思いが感じられました。

パネルディスカッション登壇者の皆様からはMaOI機構への希望や要望についてもお話しいただきました。環境・海洋・水産をテーマに幅広く取組んで欲しい、海洋微生物ライブラリーで保管している菌類に特徴や効果などが明記されていれば利用者には使いやすくなり開発のスピードが上がると思う、共同ラボだけではなくレンタルラボの開設や大学や民間企業との横の繋がりがもてるような取り組みを期待する、など貴重なコメントをいただきました。皆さまからのお言葉を真摯に受け止め、スピードを持って対応していきたいと思っております。

また来年度は、多くのフォーラム会員様の事業活動内容や成果発表内容を伝える場を設けたいと考えております。どうぞ引き続き、ご支援・ご声援をお願い致します。